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うりずんHouse

うりずんHouse

うりずんHouse 設計コンセプト

パッシブハウス(passive House)

「うりずん」は沖縄の古語で2月末頃から5月の初めまでの一年を通じて最も快適な時節のこと。森が一斉に輝き始める新緑の景色を見るだけで心が和む。
この時節の心地よさをそのまま住宅建築に反映したい。施主夫妻は沖縄の梅雨時の蒸し暑さや真夏の猛暑に対処するベストな方法を探し求めてパッシブハウスという世界基準の設計ツールに辿り着いた。環境負荷をかけずに暮らせる高性能の家に挑戦するチャンスが訪れた。一方、これまで培ってきた沖縄のオープンスペースの心地よさも視野に入れて設計を進める。最新の環境技術を学びながら、伝統の知恵に倣い、新緑の息吹を感じさせるパッシブデザインをめざす。

竪穴式住居+高床式住居の原理

敷地は沖縄県北部(やんばる)の集落にある低海抜地域で、しばしば高潮による浸水の脅威にさらされる。さらに沖縄は台風や地震、シロアリの害にも対処する必要がある。計画ではまず水害を想定、高床式の2階をパブリックスペースにし、土で囲った半地下空間にプライベートスペースを配置して、竪穴式住居と高床式住居を合体させて全体のプランをまとめた。亜熱帯気候の沖縄は年間を通じて土の温度が18~20度と安定していて、土に潜ることで冷気・暖気を適度に保つことができる。燃費のシミュレーションを通して、地域固有の断熱効果を得られることを知った。盛土部分は高さ1.4mのフライアッシュコンクリート壁で支えられ、木構造の基礎をなす。高床と竪穴の空間を結ぶ7層のスキップフロアーは仕切り壁を減らす効果があり、生活導線を最小限に留めてコンパクトな空間を可能にしている。

ハイブリット換気システムで「一屋一室」

「うりずん」の時期をはじめ100~150日(年間)は自然換気のまま過ごせる日があると想定、機械を使わない時間を増やせばエネルギー効率を高めることができる。たばこ乾燥小屋の自然換気装置を応用した越し屋根を組み込み、窓の開閉で室内の風を巡らす。重力差によって生じる上昇気流を加速して湿度調節を可能にする。そして、高窓からの自然光は家全体を優しい光で満たす。
梅雨から夏にかけては全熱交換器(ドイツ・ゼンダー社製)一台で室内の温湿度を一定に保ち、高断熱高気密仕様で環境負荷を最小限に抑える。室内の床や壁や欄間に格子を施して部屋全体の空気を巡らせば、部屋の隅々まで湿気はこもらずカビは生えない。
これらの装置が最小限のエネルギーで最大の効果を発揮するハイブリッドな室内空間を演出している。厳しい気候の元で発達した先端技術と風土に根ざした知恵を融合させて、地球温暖化など、気候の変化に対処する生活術を生み出していきたい。

生命力のあるエコロジー

伝統的な民家は小さなスペースに多くの機能を集約している。沖縄の民家には元々玄関がなかった。この家では、半戸外テラスが玄関を兼ね、リビングの延長として人が集う場にもなっている。テラスを覆うラチス状の格子は「チニブ」と呼ばれる民家の竹囲いに学んでいる。西日や台風の被害を避け、地震に強く、外部の視線を遮る役目を合わせ持つ。
南面の窓格子はアマハジ(軒先空間)とともに強い日差しを避け、さらに台風の被害を防ぐ効果がある。パーゴラは駐車場に緑の影を落とし、その鉄骨柱は窓格子と軒屋根を支えている。
室内は湿度を調節できるサンゴ石入りの漆喰ぬりかべで仕上げている。地元で生産可能な建材を将来的にも生み出せるように素材の選択にも配慮が必要だと思う。沖縄は建材の多くを県外に依存している。身近な自然素材を使い、地産地消の意識を高めることが生命力のあるエコにつながっていくと考える。ワークショップで築いた外の土壁は遮熱効果を高めている。知人、友人が協力して家づくりに参加すると楽しみが増え、人の輪が広がっていく。その作業はユイマール(助け合いの精神)の伝統を引き継いでいると感じた。その復権が、これからの家づくりのヒントになればと思う。

設計概要

敷地面積
186.16㎡(約56.31坪)
建築面積
80.17㎡(約24.25坪)
延床面積
148.71㎡(約44.98坪)
用途地域
区域区分非設定
構  造
木造2階建て
完成時期
2022年10月
建  築
株式会社具志頭工務店 (担当/具志頭孝也)
電気・水道
合同会社明正電気工事社 (担当/比嘉祐作)
木工事
グレイン(担当/浅井大希)

kogomi

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