モーイユ
- 建築地
- 沖縄県那覇市松川
- 用途地目
- 住宅
- 施工
- 1989年
街の中に光と風を取り込む
オーガニックな空間構成 ~壁切り開いて 光取り入れる~
街に建物が増えていくにつれて、動物の居場所は狭まっていく。アパートやマンションが立ち並ぶ那覇市の郊外に建つMさんの家は、動物と自由に遊べる独自の生活領域を築くことが求められていた。
かつてエコロジカルな平衡状態を保っていた郊外の民家の姿が、街の生活になじまなくなったかのように消えていった。街のくらしと自然の関係をどうバランスしていくか。八方塞がりの袋小路の敷地に対して、風、光、水、土に恵まれた自然の懐の広さを感じる環境をどのように生み出していくかをテーマに計画に取り組んだ。
タイトルになっているモーイユの“モー”は沖縄語で「野」の意味、イユは「魚」、“モーイ”は「踊り」、“ユ”は「世」と組み合わせる。魚にたとえられる生命体の自由な活動を連想することば遊びになっている。
設計の段階では、屋上や中庭、ピロティなど隅々に外の空気と触れる要素を多く生みだすことに苦心した。これは雨端のような軒の広がりを建物の内部に取り入れ中庭化することによって解決しようと試みた。
また、建物の外壁を切り開いて光と風を受けるようにした。そうして並んでいる屏風のようなコンクリートブロック壁は建物を支える構造柱であると同時に隣の窓との視線を遮る仕切りの役目もする。コンクリートの家並みの中にあって、建物の内と外の際(きわ)のやさしさを見出したかった。