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花華楼

花華楼

建築地
沖縄県那覇市長田
用途地目
住宅
施工
1994年

光に向かって咲く花

美意識を反映した家 ~生活の質を高める住まい~

那覇市の東、識名丘陵を背後に西の海に向かって開かれた長田の住宅地。周辺を見回すと、戦後半世紀の間に築かれて来た未整備の住宅群がところどころに残っている。路地裏(スージ小)と区画街路の軒並みとが背中合わせに対照的な生活風景を作っている。
未整備地の一角に住んでいた住宅が手狭になり、区画街路地内に住む両親の家の隣に新しい家を建てることになったSさんの敷地は、東側の両親の家の庭、西の小公園とを結ぶ軸線上にある。東の丘を背に入り日に向かう立地条件を間取りに生かすように計画を進めていった。
「どんな家に住みたいか」という家づくりの土台を具体的にしていくにはそれなりの努力がいる。Sさんは一年がかりで三十軒もの家を見て回り、自らの生活体験をふまえて構想をまとめた。住み手が自ら積極的に設計にかかわっていく姿勢に、家づくりへの熱意を感じた。
「必要なときに一人になれる場所を持ちながら家族が自然に顔を合わせ、言葉を掛け合うような住まい」「どの位置からでも空が見える、豊かな光の空間」「絵をかける壁のある広い居間」「何年たっても古さを感じさせない優れた景観」etc…。
細部に至る多くの項目から、好みのはっきりした美意識を感じ取ることができた。そこから設計の方針をまとめてみた。

1・必要なものが必要なところに置かれ、その要求する所に応じて構成する空間の美しさを追求する。
2・この人が居てこの家があるという存在感に基づいている、住まいのあり方を考える。
3・現代の生活サイクルに対応しながら自然とのバランスをとる。

やや抽象的だが、料理に例えれば色、味、香り。音楽ならばメロディー、リズム、ハーモニーというところだろうか。
住まいづくりも美を追求する場であってよいし、美を求める気持ちは、アーティストの特権ではない。何気ない風景の中に、身近な日常の単調さの中にも、必要から生まれてくる美しさが潜んでいる。それを垣間見ようとする努力が、きめ細やかな表現を伴って、その人なりの美意識をはぐくんでいくように思える。部屋の間取りや空間構成、素材や色の選択など、施主の趣向を細かく取り入れていくことで利用の幅が広がっていく。建物の周りをめぐる庭。半回廊の吹き抜け。壁面の多い壁式構造にもかかわらず光あふれる個々のスペース、公園の緑に触れる半戸外テラス、眺めの良い屋上テラスなど施主の気に入っているスペースは家族生活の質を高めているだけでなく、周りの人達とのコミュニケーションを深める役目をしている。庭に咲く香りいっぱいのプルメリアの花の思いが伝わってくるようだ。

kogomi

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