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奄美の家

奄美の家

建築地
鹿児島県奄美大島
用途地目
住宅
施工
1995年

使い切ることに焦点を合わせて生活の価値基準を見直す

  • 一級建築士事務所 アトリエガィィの作品
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  • 一級建築士事務所 アトリエガィィの作品
  • 一級建築士事務所 アトリエガィィの作品

奄美の木造住宅に学ぶ

「風をめぐらす工夫をした沖縄の住宅は奄美でもできるものでしょうか」。奄美大島からの電話の問い合わせがあった。依頼主が沖縄を訪ねてきてアトリエガィィで設計した沖縄の住宅を紹介し、またこちらからも奄美の住宅事情を見に行った。

住まいを通して、奄美と沖縄の生活文化のつながりをつぶさに見る機会を得ることになった。

やんばるの森の印象がそのまま移動して広がっていくような奄美の自然の風景。街や集落のカラフルなトタン葺の屋根のつらなりが、島じまの力強さを表現しているように感じられた。もとをたどれば共通の基盤にあるはずの沖縄と奄美の生活文化。行ってみて初めてその道行の“ずれ”を感じた。

沖縄で試みている風土に根ざした住いの考えを奄美でどう展開することができるか、興味がわいてくる。奄美に生きている木造住宅の力強さに学んでいけば、現在の沖縄の家づくりの傾向を見直していくことにもつながる。そういう意味を込めて奄美で住宅をつくるという新鮮な出合いがあった。

生活の価値基準見直す ~使い切ることが基本~

そして現在の住宅建築が失っている、生活の指標・価値基準を見直していくきっかけになるような気がした。

軒の低い木造住宅の家並みは、ヒューマンなスケールを保っていることで安心感がある。

奄美と沖縄の民家の間取りの違いは、沖縄では一番座・二番座というふうに南北を縦に分割していくのに対して、奄美は表と裏で南北を横に分割して広げていく。

横から入っていく玄関までのアプローチの仕方は敷地と庭の構造を特徴付けている。

母屋と離れを別につくる分棟的な配置の仕方も伝統的な奄美の住宅の特色である。その時々の必要に応じて小さな別棟を造る方式はライフサイクルに見合った家づくりの合理的な方法なのだと思う。物資を地域で調達して家を建てていた時代の知恵がある。小さな単位で棟ごとの移動がしやすい。建設資材をまるごとリサイクルすることが当たり前に行われてきたのだろう。島であるが故の知恵が働いていると思う。沖縄の住まいもそうだったに違いないと想像することができる。

排出するごみの再生という意味合いの現在のリサイクルとは意識が違う。必要に応じた当たり前の利用という意味で「ナンクルサイクル」と呼んだほうがいいのかもしれない。

使い切ることに焦点を合わせて素材を生かすことは、同時に幅広い視野の生き方、考え方をすることであり、家づくりの大切な一面であるととらえてみたい。

風土になじむ伝統的な木造の在来工法で、現代の生活空間をつくっていく過程で、価値観のぶつかり合いもある。

生産することに基準を置いているこれまでの多くの家づくりのシステムは、いかに時間をかけずに生産コストを抑えていくかに照準を合わせがちになる。経済的側面の価値が優先されやすい。資産価値という基準が付いて回る。そのようなものを所有することへの関心から、より良く生きることへの関心へと世の中の価値基準が変わっていくようにも思える。地域の潜在的能力をフルに活用して、身近な素材を使いまわして、使い切るという自然観、暮らしにとって当然のサイクルを家づくりに応用できるといいと思う。自然のサイクルと一緒に育っていくオーガニックな空間を連想することができる。森の木の成長と見合う家づくりのサイクル、開発のあり方、住まい方など奄美で学んだことをこれからの沖縄の家づくりに生かしていきたい。

kogomi

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