ハルヤ
- 建築地
- 沖縄県宜野湾市
- 用途地目
- 住宅
- 施工
- 1996年
自給自足の暮らしのゆとり
土の香り求め小屋づくり ~配置を工夫してつがいの関係に~
Tさんの「ハルヤ」は、家というより小屋か庵を連想する。夫婦が子育てから解放されて、暮らしの余暇に土を耕すことを覚えたことが小屋づくりにつながった。その延長線で趣味を楽しむことができる小さな工房を一緒につくることになった。
暮らしの節目に生まれてくる新しいライフサイクルを思い浮かべながら、暮らしのゆとりをどう小屋づくりに反映させていくかをテーマに計画が進んでいった。共通の趣味を持っている夫婦が一緒に楽しめる小屋づくりという意味合いで畑と庭、小屋と庭、畑と小屋がつがいの関係を持つように配置を考えた。下の畑の土を屋根にのせて、地続きの畑を屋上まで延ばし、屋根全体が土と水の流れを受け止める人工土地の形になっている。
建物は自然の素材を使い、内外の壁は土を混ぜたしっくいを塗る。土は工事の際に掘った赤土をそのまま活用。床は石敷きの土間で、靴のまま外から出入りができる。 平面は、中庭を囲むように周り廊下状に工房と畳間を結んでいる。庭と畑に向いて開いた窓の周りにちりばめられた植物の眺めは、時とともに変化している。植物の生命力を通して自然のサイクルを学ぶことのできる土のある庭と畑、家と庭が一体につながっている風景は、生活の基本的な要素をまるごとかかえている点で、昔の民家のつくりにも共通している。
自分の好きなことに熱中していられる場所をつくることは豊かな暮らしの原点である。そして畑をつくり、身近な人たちが集まって収穫を楽しめることは、ゆとりある暮らしの始まりである。
ゆとりの時を土に求める家づくりが、これからも増え続けるといい。