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玉水の家

建築地
沖縄県与那原町
用途地目
商業地域
敷地面積
357.4㎥(108.1坪)
床面積
147.1㎥(44.4坪)
1階
109.6㎥(33.1坪)
2階
37.5㎥(11.3坪)
構造
鉄筋コンクリート+木造(混構造)
施工
/2005年5月

はじめに

「くるる(戸枢)むしばまざるは 動けばなり。形気もまた然り」(養生訓より)

養生訓では、風・寒・暑・湿の4つの外部をコントロールする術が述べられている。
気を廻らし生気を養う。人間の元気はもともと天地万物を生む気が元である。よく使われるスペースを計画することが、サステナブル(持続可能)な住まいの秘訣であると考える。

風が巡り、陽が廻り、水の微笑みを絶やさない住まいを目指した。

  • 玄関から居間

    玄関から居間

  • 台所のつながり

    台所のつながり

  • 2つの庭につながるリビング

    2つの庭につながるリビング

  • 一階はすべてバリアフリー仕様

    一階はすべてバリアフリー仕様

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  • 一級建築士事務所 アトリエガィィの作品
  • 一級建築士事務所 アトリエガィィの作品
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  • 一級建築士事務所 アトリエガィィの作品
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設計の概要

当敷地は、「親カー」と呼ばれる水を祭った広場と隣接し、与那原大綱引きなど伝統行事が近所で催される場所にある。
広場には大きなガジュマルやデイゴの木が茂っている。
配置計画では、広場に接する東側に風の庭を配置、かつて屋敷を囲っていたハイビスカスの生垣で緑のつながりを再生した。

囲いの中は芝生と草木を楽しめるように、
また人や植物の出会いの場となるよう計画した。

  • 水を祭った広場

    水を祭った広場
    「親カー」から、デイゴの木間を
    涼しい風が通り抜ける

  • 雨水を利用した池

    雨水を利用した池。
    道行く人に親しみを
    感じさせる

  • 	「親カー」の祭り

    「親カー」の祭り

  • 与那原の原風景

    与那原の原風景を映す
    新しさをもつ外観

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◆水のほほえみを絶やさない暮らしの環境

活用方法
・屋敷の中にある古井戸をそのまま残して活用する
・古井戸の周りを縁側で囲み中庭をつくって、井戸を中心にした水廻りのスペース
(台所、風呂場など)を配置する
・雨水利用、屋根の水を中庭に集め、地下タンクに貯めて、散水、洗車、洗濯などに使う
・もう一方の地下水(ポンプ利用)は便所に利用する
・食器、食品洗い、飲料水は上水を利用し、その他は中水を利用するように配管を別系統にする
活用の目標
・中水の水を多様に活用することで、使われなくなっている「親カー」をはじめとする、
 身近な水の再利用を促すきっかけになる
・歴史的な価値のある親カーの水と親しみを感じさせるような、水のある庭の風景をつくる
・水管理のあり方、環境への影響、安全性などの使い道を、実践を通して学ぶ
・水のある暮らしの豊かさを味わえる家づくりを目指す

ランドスケープ(景観)のデザイン
水場の中心になる古井戸と敷地の南北の角を結んでひとつながりの水のラインを構成する

ランドスケープ(景観)のデザイン


この二つの庭を抱くように縁側を配置し、その間にリビング、個室、水廻りの各室を配置した。伝統的な木造民家の開放的な性格を東西に広げて、朝夕十分な光が部屋いっぱいにめぐるようにする。

間取りの特色として、それぞれの生活シーンに応じた使い方を可能にする、和の伝統ともいえるフレキシブルな部屋の構成になっている。

和室は現在、仏間と寝室を兼ねているが、現在の祖母室は、いずれ夫婦の寝室になる予定である。

現在の子供室二室は、いずれ一つの空間にして、趣味の部屋など多目的に利用できるように、間仕切りを工夫してある。


◆水のほほえみを絶やさない暮らしの環境

光庭と風の庭 ; 東西に2つの庭を配置、庭の性格と一体にそれぞれの部屋を構成する

・東の風の庭は親カーの広場とつなぎ、広い自然の草木を楽しめる出合いの場として表の景観をつくる
・西の光庭は建物の部屋を明るくする一方、毎日の暮らしの必要に応じた裏庭の役目をする
・基本的な間取りの構成(伝統的な町屋と、昔の民家の混ざり合った形式の間取り)
 リビングを中心に、平屋の開放的な性格を全体にひろげ、朝夕十分な光が部屋いっぱいにめぐるようにする

個室を兼ねたみんなの空間 ; さまざまな生活シーンに応じた、フレキシブルな部屋の使い方を考える

・和室兼、仏間兼、寝室;1つのスペースを多用途に使える工夫
・子ども室の廊下は書道スペースや読書空間になる
・玄関は外庭と一体に接客の場、喫茶コーナーに変身する
・1階の廊下は縁側のある外庭との一体感を抱けると同時に、内側からも部屋の延長として広く活用できるようにする
・かぎ型の廊下は外と内をつなぎ、みんなの空間、ひとりの空間を結ぶ導線である。それと同時に風を切り、日差しをやわらげ、空間や人の和を保つ緩衝地帯でもある

光庭と風の庭


構造と工法のサスティナビリティ

台風とシロアリ被害が大敵とされ、沖縄では見放されてきた伝統的な木造家屋の構造的欠点を補う工夫をした。
木造の弱点である床下の湿気対策を、コンクリートのベタ基礎に変えると同時に、高床式住居の伝統に習い床下を深く取る(1メートル以上)ことで解決した。

また、コンクリート造の弱点は、塩害にさらされることである。そのため木造とコンクリート造、両方の欠点を補うため土に触れる土台部分と構造の中心部分はコンクリート造に、上部の壁や小屋組みは木造の混構造とした。

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耐久性

混構造にすることで、各構造の強度的な弱点をカバーしている。屋根は2重垂木にすることで、屋根の重量を支え強風に耐える。


屋根断熱

電力の消費を軽減する。個室以外は冷暖房機器をつかわず、開口部を多く取り自然の通気、換気の容量を大きくする。
2重垂木の構造で屋根断熱を十分にとり(2枚の野地板の間に断熱材を挟みこむ)、天井を張らず、小屋の中を空気がめぐるようにする。


分舎式住居に学ぶ採光、日射遮蔽

伝統的な民家は小さな木材を最大限に活かすために間取りの単位は小さい。必要に応じてそのつど建て増して来た。
小さい単位の家は分解することができ、移動再構築ができ、建材はリサイクルされ長い間使われた。この分舎式の住居は、光を取り入れやすく部屋を明るくする。構成単位を小さくすることで壁面を大きくとり窓を多くすることができる。
それに伴い軒も広がって日差しをさえぎる効果も高まる。


高床式自然呼吸型換気システム

高床の伝統を取り入れた換気システムを採用した。
基礎部分を1メートル以上深く掘り高床とした。その床下に外部の空気を取り入れ、無双式通気窓や床格子を通して室内へ取り入れ、引き違いガラス戸の欄間部分にしつらえた無双窓から外へ流れ出る仕組みとした。


子供部屋の無双式通気窓


設備のサスティナビリティ

熱源はオール電化方式で統一。イニシャルコストとランニングコストを共に抑えるよう配慮した。

亜熱帯海洋性気候の温暖な土地なので、設備機器に頼らず、建築的工夫で寒暑に対応することが難しくない。伝統の住まいの知恵を借りながら、より自然環境になじむ建築的手法を考えた。

ローコストで多様に水を使う贅沢を可能にする。(雨水&地下水利用)

この住宅は水のテーマを意識的に反映し、『玉水の家』と名づけている。もともとこの地域は地下水が豊富な場所で、井戸を利用してきた。それらの井戸は水が豊富にあるにもかかわらず上水道の普及によって使われなくなってしまった。その井戸を復活させることを話し合って計画に反映させた。今ある資源を最大限に使ってこそ省資源を促進する手がかりになる。

古井戸を囲んで中庭をつくる。古井戸の水は手動ポンプで野菜や靴、手足の洗い場に。雨水を採り、ろ過して地下タンク(約12トン)にため、便所、散水、洗車、洗濯につかう。もう一方、深い層の地下水(既設)は雨水を補足して使う。上水はキッチンと浴室のみに配管する。

  • トイレの水は雨水利用

    トイレの水は雨水利用

  • 中庭の井戸に手押しポンプ

    中庭の井戸に手押しポンプ

  • 雨水のろ過装置

    雨水のろ過装置

  • 深層地下水で雨水タンクを補う

    深層地下水で雨水タンクを補う

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光熱費の比較

家族が一人増え(寝たきりの老親)、トイレ、浴室も二箇所になり、また庭の散水など水の使用量は増えたにもかかわらず、雨水、地下水を利用したおかげで、水道料金は減っている。

オール電化にしたことで、電力消費量は年間を通してほぼ安定している。寝たきりの親が一日中クーラーを使用する夏場は、多少使用量が増えるものの、以前住んでいた住宅に比べ、8月と9月の電力消費量は減っている。日中照明をつけなくてもいいということと、クーラーを使わなくなったことが大きな原因だと思われる。

下記に示す表は当建物に住む以前の光熱費と、当建物での光熱費の比較である。

以前の光熱費                                          単位(円)

H15年 電力 ガス 灯油 水道 合計
7月分 9,418 2,236 3,000 4,867 19,521
8月分 18,928 2,236 3,000 5,464 29,628
9月分 17,046 2,194 3,000 5,761 28,001

当建物での光熱費                                         単位(円)

H18年 電力 ガス 灯油 水道 合計
7月分 14,777 - - 4,783 19,560
8月分 14,783 - - 3,147 17,930
9月分 14,548 - - 3,406 17,954

素材のサスティナビリティ

さまざまな要因で長い間、見放されてきた沖縄の木造技術。その良さを一つでも現在の住まいに活かすには、人や技術を長い目で育てていく必要がある。

プレカットによる在来の軸組み工法によって沖縄の木造住宅の新しい方向を探る。

琉球本瓦葺きは、漆喰で塗り固めるため、将来的に維持管理が必要である。
当地与那原町は、古くから瓦工場が多く集積していて瓦職人も多い。

瓦の原材料であるクチャを建材として活かせる可能性も高く、将来的に職人が育っていく環境につながる。

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「建築は生き物」

サスティナブルな建築は、ただ堅牢で長く生き続けるだけでなく、住む人と住む家が互いに支え合って幸福な関係を築くことに意味がある。

住む人の暮らしが建物を自分達の体の一部にしていくことではないでしょうか。

知らないうちにいつのまにか成長している子供の姿や自然に育つ大木の状態を連想するのと同じようなものです。

Tさんの住み始めてからの感想

計画段階で予想していた以上に、風や光を肌で感じることができ、そのつど新しい発見があり、家に居る時間がとても充実している。

梅雨時の湿気の多い時でも、床に湿った感じがほとんど無く、カラッとしていて気持ちが良い。(以前住んでいた家は、雨の日サッシ戸を空けると湿気が入って床がべとついていた。

共働きで、日中はほとんど締め切りの状態であるが、帰宅して家の玄関を開けたときのムッとした熱気が感じられない。家の中は風通しがよく、木陰にいるような感じで、真夏でもクーラーを使わずに過ごしている。

冬場は、コンクリート建ての家のひんやりした感じが無い。多少の隙間風や、フローリング床の冷たさを感じることもあるが、外気が暖まれば、家の中も自然と暖まっていく感じがする。

休日の朝は内庭(西側の庭、午前中は日陰)でコーヒーを飲んだり新聞を読んだりして過ごし、午後は外庭(東側の庭、西日が当たらない)の縁側で過ごすことが多い。

日中は、どの部屋もいっさい照明をつけずに家事や読書ができる。四方にめぐらされた窓の光が隅々にいきわたり、光の変化で季節を感じることができる。

夕刻、日が沈むと東側の庭から家の中に、涼しい風の流れを感じる。アスファルトの道やアパートに囲われていても。緑のスポットがあるだけで随分変わるものだということを実感している。

家は締め切っていることが多いが、風が通り適度な日当たりがあるためか、観葉植物が元気に育っている。(前の家では枯らしてしまうことが多かった)
漆喰や杉や琉球松などの自然素材を使用し、内部の仕上げ材も自然オイルを使っているため、新築特有の嫌なにおいが無く、香ばしい。

第二回サステナブル住宅賞の優秀賞受賞作品

 玉那覇邸は、沖縄県与那原町の敷地面積335㎡延べ床面積147㎡規模の住宅である。建て主夫妻とその子供2名及び高齢者1名の3世代5人家族が居住する。敷地は町中であるが、ガジュマルやデイゴの木が茂る町の広場に隣接し、ハイビスカスの生垣で街並みの緑の連続性が考えられたものとなっている。住宅はRC造一部木造で、意匠的には沖縄の伝統的な木造住宅とし、木造の弱点である床下の湿気対策をコンクリートのベタ基礎と高床式のRC造として、2階部分を在来の軸組広報の木造としている。

屋根も琉球本瓦葺として町の瓦産業育成に効力したヴァナキュラーな工法を採用している。隣接する広場が水を祭ること、古井戸があることを考慮して、水の有効利用にこだわり、井水、雨水利用を積極的に行っている。沖縄は亜熱帯海洋性の気候であることから、冷房や暖房など設備機器にあまり頼らず、暑気対策としては日射遮蔽や通風の積極的利用など沖縄のヴァキュラーな建築的工夫を活用している。暖房は囲炉裏(木炭)を利用する。

ヴァキュラーな建築様式に近代的なRC造、全電化設備を上手に配して、サテナブル建築の一つの方向を示すものとなっている。

(加藤 信介)

kogomi

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