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伊江島団結道場の改修工事

「伊江島団結道場の補修工事」

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「改修前の写真」

1.建設の経緯

戦後、米軍の強制的な土地接収に対抗して土地を守るために学び合い、真理を探求する場として1967年~1970年にかけて団結道場が建設された。
米軍に対して受け身ではなく積極的にたたかう伊江島土地闘争の拠点であり、その後の沖縄全殿島ぐるみ闘争の原点として今も多くの人に語り継がれていて、訪れる人が多い。当時のたたかいの様子を彷彿させる壁書きはそのまま残っていて、いまだに現実味を帯びている。
建設から50年を経て、老朽化が進み、補修工事をすることになった。


2.建築物の特徴

コンクリートブロック積みの壁にコンクリートの水平屋根スラブが載っている。
それを支えるようにコンクリート造の三角アーチ状の柱と梁が建物本体を支えている。
室内は集会、勉強会、遠方から来た人のための宿泊などに使われてきた。

建物のつくりはこの時期の沖縄の建築事情を反映している。戦後復興当時の木造建築からコンクリート造への転換が進んでいた。コンクリートブロックづくりの外人住宅など米軍基地建設と並行して歩んできた独特な風景を創り出している。現在の沖縄の建築風景を造っているひな型がこの時期に生み出されている。


3.計画のコンセプト

歴史的建造物としての建築的価値を長く存続させる。
当初の調査段階では鉄筋の爆裂によるコンクリートのはく脱が激しいので補修が困難に思われた。建て替えも視野に入れ、細部の調査をしながら建物の状況に見合わせて工事を進めていく。
できるだけ当時の姿を残して保存していきたいという保存会の皆さんの意向にこたえて、長期にわたってこの建物を維持できる方法を考える。
コンクリートの強化と鉄筋の保護のために、無機質の素材を浸透させていく特殊工法を採用する。


平和を築いていく象徴としての役割を持っている。
外観は三角のアーチ状のコンクリート柱が象徴的にそびえるモニュメントの役割をしている。鳩が羽を広げて飛び立つシーンを当時の設計者がイメージしたと伝えられている。
モニュメントと建築が一つになって構造的にも支え合っているのが強く印象に残る。
そして、土地を守る会の阿波根昌鴻さんの当初の計画の趣旨に基づいて、白く輝く姿をそのまま再現できるように、全館が白一色に包まれることが望まれている。
建設当初から集会や学習に使われてきた内部は今後、展示空間として活用していきたいとの意向から床や間仕切りを取り除いて、広くなった壁面を展示目的に使えるようにする。


持続可能性のある工事内容であること
初めて試みることが多い今回の特殊工法は他にも沖縄各地に残っている古いコンクリート建造物の補修工事の可能性を広げてくれると考える。コンクリート建造物の寿命を延ばして使えるようにしていくことが、エコロジーの建築環境にとって大きな課題である。
この補修工事の内容が新しいモデルになって発展していくことを願う。


4.補修工事の内容

石灰石のバラスが使われているためコンクリートはきめが粗く、老朽化したコンクリートの強化が必要不可欠である。
表面に幕を張る通常の塗装ではなく、無機質の材料を注入浸透させる工法とする。
Sクリートアップ+超微粒子セメント、シロキサン配合Sクリートカラー、Sクリートガード(撥水性)をそれぞれの場所に応じて全体に使い分ける。
下地材は一般的なパーライトモルタルを使わず、防水性の高いポリマーミックス30番20番15番5番を場所に応じて判断施工する。
爆裂個所は破損部分を型枠で支えその中にNSグラウトを注入、ドカモルセメントを併用する。
建物の構造にもなっているモニュメントと屋根を支えている梁は、溶剤を注入し深く浸透させて鉄筋の錆を防ぐペガサビンを採用する。
モニュメント全体と壁の一部に浸透性フレスコカラー(シロキサン配合)を白色で塗り、さらに仕上げの白色を鮮やかに出すために塩害や紫外線に強いバイオファインを塗装する。
そのあと、壁面全体をシラン系撥水材でコーティングする。屋上部分は撥水性の高いSクリートガードでコーティングする。
耐震補強のため、鉄骨の柱4本を室内に配置して梁を支える。


5.工事竣工に寄せて

団結道場の北と南の三角形のアーチの柱を眺めてみると、その角度が六芒星を構成できることに気づいた。六芒星といえば伊江島のテッポウユリを連想する。
海岸線の岩間に立ち上がる三角の波頭に向かって自然に咲いているテッポウユリの姿が凛々しく思えてくる。その花のように日々の暮らしの中に平和をつくっていく努力をしていきたい。


kogomi

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