浜は街の庭、庭は海を抱いている

街に隣接する浜辺

石川市街地の海沿いに黒ずんだ石囲いの要塞が城跡を思わせる公園がある。米軍の保養地だった石川ビーチを、新しい街の近隣公園として整備したものだ。この公園の計画にかかわった当時のことを思い出しながら、海辺の環境と街のつながりについて考えてみたい。街に隣接した自然の海岸線をそのまま残して公園にすることを計画当時だれもが望んでいた。そして、それにこたえるために海浜の魅力を引き立てる新しい発想と工夫が必要だった。 計画では、なだらかな砂浜をすり鉢状に陸の方に敷地いっぱいに広げ、その緩やかな斜面上にさまざまな施設を配置した。そうして浜と一体になった多くの広場が出来、盛り上がった芝生の丘になった。背後は波のうねりのような石積みが丘をせき止めている。

陸の活動を海に求める埋め立て開発の発想を逆転させ、海を中心にして浜辺を陸の方向に倍の広さに押し広げたのである。埋め立て地先に人工ビーチを造る昨今の手法とは全く正反対の構想だった。残念なことに公園として残された浜辺の半分近くが数年後、埋め立てられてしまった。視界が狭められ、水面に浮かぶ朝日も消えた。この公園を訪れるたびに水平線を眺められる浜辺のありがたさをいっそう強く感じるようになった。自然海岸が街から消えていく現実を食い止める術はないのだろうか。海岸線の実情を見るにつけ、計画の際、十分な議論を尽くしているのか疑問に思う。

一方、区画整理事業から発生した旧集落のフクギ林が公園に移植された。林立するフクギは二十年という時を経て、広場の中心的な役割を担っている。幹周りが三メートルもあるモクマオウの木立は長い間この地に君臨してきた主のように威風堂々とそびえ、成長したクワデーサーも広場を覆い、樹々は海浜の自然のサイクルに溶け込んで、防風防潮の役目を果たしている。そして、海浜は自然の流儀を愛する街の人たちと共にある。

家の庭先をそのまま公園に移してきたような広場に集う人々の光景は、気取らない日常の暮らしを映しているかのようだ。「白浜は海の幸、街の富」という計画の理念が浮かび上がってくるようでうれしい。