植物と共に変化する
- 建築地
- 沖縄県宜野湾市真志喜
- 用途地目
- 住宅
- 施工
- 1981年
植物とともに変化する
超感覚を頼りにした住宅へ
インドでグル(精神的指導者)が弟子たちに人間の心理についての講話をしていた。多くの本を読まなくても霊的修行をすれば最終的に人々を理解するでしょうといって次の話をして聞かせた。
「昔、ラーマの弟子がとある森の樹々のそばを通っていたら、その樹の枝で鳥の歌う声を聞いた。“ラーマ、シータ、ダシャラタ”と歌っているのをきいて鳥が神の名を唱えていたと感じてとても幸せだった(シータはラーマの妻、ダシャタラは彼の父)。
それから一人のムスリム(回教徒)がやって来て同じ樹のそばを通りすぎた。彼は鳥の歌声を“アラー、コーダ、ハラザット”と聞いて鳥でさえもムスリムの神をたたえて歌っていることに喜びを感じた。
そして一人の少年がやって来た。彼は自分が玉ねぎとにんにくを出す役目のレストランの給仕なので、誰も自分のことを好きじゃないんだと思っていた。しかし彼は鳥が“ガーリック、オニオン、ジンジャー”と歌っているのを聞いて幸福感を味わった。 次にレスラーがやって来た。彼は肉体の鍛錬をいっぱいやっているものの頭脳は鈍くなると聞かされていた。しかし同じ樹の枝で鳥が“プッシュアップ、シットアップ、ニーベンド”と歌っているのを聞いたのだった。」
グルは微笑んでいった。「鳥はただ鳥の歌を歌っていただけでしょう。だけど人は自分の心理によって自分が聞きたいように聞いてしまうのですね。」
鳥の声は海辺を歩いているときのさざ波の音に耳を傾けているときの心理にたとえてもいいし、テレビやラジオに聞き入っている現代人の心理に思いを巡らせてもいい。我々の想像力の範囲がメディアの周辺から抜け切れないとらわれの自由を追い求めている姿が目に浮かぶ。
家づくりも、そうした個々の思い込みやこだわりとの心の葛藤を経過して、そのエネルギーをはずみにしながら新しい生活の規律をつくっていくのかもしれない。
自分の感覚を通してつかむ信頼の手ごたえ(Self Confidence)と、社会とともに歩むことではたすべき役割(Social Trust)と、宇宙意識へ近づこうとする日常の努力(God Faith)の3つの信頼の渦がテーマであり、方法でもある。