ギャラリー

  1. トップページ
  2.  > ギャラリー
  3.  > 北中城の家

ハルヤ

北中城の家

建築地
沖縄県北中城
用途地目
住宅
施工
1997年

畑の中の新居 新しいライフスタイルを提案する

型を模索する時代

アカバナの生垣に囲まれた畑の一角に建っているこの家は、ずっと以前からこの集落にあったように落ち着き払っている。屋根がコケむしているように見えるのは、断熱のためにしっくいを混ぜて固めた赤土層のせいだ。家の中に入ると印象は一変する。すっきりと整った住みこなしが心地よい。部屋の隅々に差し込む光が、限られた空間に広がりを与えている。周りの風景を眺めていると、集落と隣り合わせに広がる米軍住宅地の違いが目に付く。地形や方位など風土をとらえての道や家の向きが決まる伝統的な集落の様子と、道のパターンに沿って機械的に並んでいる外人住宅の違いが手に取るように分かる。その対比に代表されるような様式の混在が目に付く。中部一円の急激な風景の変化は、見方によっては脈々とつながってきた伝統に息を吹き込む、一陣の風なのかもしれない。外見の変化を通して人々は無意識のうちにも生活本来の姿、住まい方の新しい基準を探しているように感じとれる。

手ごろに求められる、手間のかからない家づくりが、一世一代のイベントになっている昨今、家づくりの夢をハードな面に託してしまって、それに費やす労力と時間を想像するだけで疲れてしまうケースが多いのではないでしょうか。家づくりを通して生活の土台をしっかり見直し、新しい生活の型を模索する良い機会なのにと残念に思う。

住み手にとって、住まいの基本的な役割は何かを、もっとよく考えてみたい。さまざまな価値観が交錯する中で、その人なりの積み重ねた経験の上に、身辺を見直し生活の目標を設定することは、とても大切なことです。世の中の傾向や価値基準に縛られずに、自分なりの暮らしの理想を掲げることができると思う。

家づくりの基本 ~話し合いを十分に~

設計者は計画の過程で話し合いを深めていくことで、住み手の求めている家がどういうものか具体的に知ることができる。住み手は自分の考えをよく話せて相談できる専門家がいることで希望を具体的に描いていけるようになる。さまざまな角度から想像をめぐらせて話し合っていくうちに、方向が見えてくると家づくりは楽しみが膨らんでいくものです。住み手と設計者と職人が出会うことで話し合いを重ね、相乗効果を発揮していくことができれば、計画は予期せぬ可能性を秘めている。ハードな側面に偏ることなく、暮らしの目標や将来のビジョンをも話し合える和やかな計画の場づくりが求められているように思う。

住み手の現在と将来の像を思い描いて、相互に話し合いを深めていけば、エネルギーを要する努力も、かけがえのない目標に向かい前進する喜びにつながっていく。築3年の今回の住宅を訪ねて、その暮らしぶりを拝見しているうちに、計画の過程を振り返り、反省の意味もこめてそう思った。そして、話し合ってきたことは建設の工程の中でというよりむしろ住み始めてから生かされていくことを実感した。これからももっと「すべての工程を楽しめる家づくり」を目指し、住まいの可能性を広げていきたい。

kogomi

←ギャラリー一覧へ戻る